子ども

心理学、脳科学等の研究結果から考える日本の子育て、そして保育 (5)


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★最近出た研究結果(2016年1月6日、14日加筆)★



●おもちゃの種類と言葉がけ、やりとりの関係

 2015年9月に出版された “Thirty Million Words: Building a Child's Brain” (3千万語:子どもの脳をつくる)をぼちぼち読み始めています。介入策の話がたくさん載っていますので、少しずつここでも紹介していきます。その前にひとつ、最新の研究成果を。

 米国Northern Arizona UniversityのAnna V. Sosa博士の論文(JAMA Pediatrics誌、2015年12月)によると、電気仕掛けのおもちゃ(光や音楽や言葉が出る)で親子が遊ぶ時は、従来のおもちゃ(木のパズルやブロック)や本で遊ぶ時に比べて、会話の量と質が落ちることがわかったそうです。

 10~16か月の子どもとその親のペア26組が観察実験に参加。それぞれのペアについて家庭で15分ずつ、電気仕掛けのおもちゃ、従来のおもちゃ、本でそれぞれ(別の時に)遊んでもらい、記録したそうです。そして、保護者の言葉の数、子どもの発語数、対話のやりとり数(親子の言葉のキャッチボール)、子どもの発語に対する保護者の言語反応数、今、遊んでいるものに関連する保護者の言葉の数を数えました。ちなみに、電気仕掛けのおもちゃは、「子どもの言語発達に良い」と宣伝されているものです。

 すると、3種類の玩具の違いが、すべての結果に影響しました。電気仕掛けのおもちゃで遊んでいるときは、保護者の言葉数、言葉のやりとり、保護者の反応、遊んでいるものに関連する言葉の数、すべてが、従来のおもちゃ、または本で遊んでいるときに比べて統計学的に有意に(偶然以上の確率で)少ないという結果でした。また、従来のおもちゃで遊んでいる時は、本で遊んでいる時に比べて保護者の発語数が少なく、遊んでいるものに関連する言葉の数も少ないという結果でした。本で遊ぶということは、絵を指さして「これは~だね」「~って言っているよ」といった会話をするわけですから、当然、保護者の発語数も増え、もの(本)に関連する言葉も多いのでしょう。

 この論文の結論は、「電気仕掛けのおもちゃは従来のおもちゃに比べて、保護者が子どもにかける言葉の数が少なかった。やりとりも少なかった。子どもの初期の言語発達を考えると、電気仕掛けのおもちゃよりも、従来のおもちゃのほうが良いかもしれない(読書よりもおもちゃで遊ぶことが好まれるのであれば)」。

〔以下、掛札のコメント〕
 この実験は、「電気仕掛けのおもちゃが悪い」とは言っていません。ただ、子どもとの言葉のやりとり、子どもにかける言葉が言語発達に重要である以上、言葉かけややりとりが増える遊びをしたほうがいい、ということでしょう。とはいえ、保育現場で見ていると、ブロック等のおもちゃで遊んでいる子どもたちに何も声をかけず、ぼんやり見ているだけ、という保育士さんが少なくないのも事実でありまして、そうすると「木のブロックがあるから素晴らしい!」とは言えないことになります。まずは、ヒト。そして、ヒトとヒトをよりつなぎやすいモノ、なのでしょう。

●論文:Sosa, A.V., (2015). Association of the Type of Toy Used During Play With the Quantity and Quality of Parent-Infant Communication. JAMA Pediatrics, (Online version)
●私が最初に聞いたラジオのニュース:Electronic Toys May Hinder Baby Language Development


(1月14日加筆)
 1月12日の米国 National Public Radioで、この研究を取り上げていました。元の論文は有料なので、論文抄録と第一報のニュースだけで上の記事を書いていましたが、以下、このニュースをもとに加筆します。

 子どもの言語発達の基本は、とにかく「聞く」こと。そのため、この実験で使われたような、言葉を発したり歌を歌ったりする玩具が「言語発達によい」というふれこみで売られているわけです。けれども、「身体発達や認知発達、社会的発達に対して玩具に効果があるという宣伝には、それを裏付ける研究結果がない」と、米国University of Wisconsin, Madisonの発達学者 Heather Kirkorian博士は話しています(Kirkorian博士は、この研究のメンバーではありません)。「大きくなった子どもには、テクノロジーが発達の助けになるかもしれないが、小さい子どもにとっては、人との対話が一番」とも。

 このニュースの中に、実験で使われた電気仕掛けのおもちゃの説明がありました。動物やモノの名前を言う玩具や赤ちゃん用携帯電話、赤ちゃん用ラップトップ、いずれもボタンを押すとおもちゃが何かを言う…、日本にもいまどきたくさんある玩具です。いずれも、1歳未満の子どもの言語発達に良いという宣伝で売られていたものだそうです。

 このラジオ・ニュースの、子どもが実際に遊んでいるところを聞いていただければわかると思いますが、機械仕掛けのおもちゃで遊んでいる時は、そこにいる保護者は何も言わないでいます(そして、子どもも何も言っていません)。つまり、赤ちゃんの時期に言葉を一番うながす「対話」が生じていないのです。そしてそもそも、子どもが玩具(機械)から直接言葉を学ぶことができるという証拠は、まったくないそうです。

NPR News(1月12日):The Trouble With Talking Toys.


(6に続く)




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